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 しかし一度頭から追い払ったはずの恐怖心はじわじわと僕の心を侵していった。歩き続けながらも背筋の悪寒は消え去るどころか益々はげしくなり、僕は絶えずうしろから、誰かに見られているような気配を感じ続けていた。僕は前を見ながらも、後ろから聞こえるかすかな物音にも敏感になり、何度も後ろを振り返らずにはいられなかった。  老婆は、隣村までは歩いて半日くらいだといっていたのに、いっこうに村の気配すら感じることができなかった。何度か分かれ道はあったのだが、僕は老婆に教えられた通り太い方の道をたどって来た。しかし道は開けるどころか、どんどん山奥へと入っていくような気がしていた。  そうこうするうちに日はだんだんと傾き始め、山の短い一日は終わりを告げ始めていた。僕は焦りを感じ始めた。もはや太陽は山の峰に隠れ、光線は僕の頭の上を通り越してしまい、辺りは上を通り過ぎていく光のおこぼれにあずかるにすぎず、薄暗く見通しが利かなくなってきてしまっていた。
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