夢のむこう側

1/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

夢のむこう側

昔、泳ぐことが好きだった。 だから水泳部に入ったし、成績もそこそこ悪くないほうだった。 その日はインハイも近くて、遅くまで練習していた。    帰り道にあんなことになるなんて想像もしなかった。 突然飛び出してきた車を避けきれず俺は、全治二週間の怪我を負った。 顧問には、諦めろと言われた。 仲間には、仕方ないと言われた。 俺は、 「誰が諦めるもんか」 と言った。 そして全治二週間の体を引きずりインハイに出場。 まぁ、結果は惨敗で、居にくくなった俺は部を辞めた。 だけど、後悔はしてない。諦めなかったから。 そういえばあの時の声援、気持ち良かったなぁ…。 「望さん?」 突然名前を呼ばれて目を覚ますと目の前に紗幸が居た。 あまりに近い距離にドキドキしてしまう。 「なんでしょう?!」 何今の。 声裏返ってるし。 「これから出掛けましょう!もうお昼過ぎですし、ご飯食べて支度して下さい」 いつも以上に真剣な紗幸の声が俺を不安にさせた。 俺と紗幸は最後のデートに出掛けた。 名前も知らない駅をいくつも通り過ぎた。 「あと少しです」 と紗幸が言う度に不安は大きくなっていった。 初めて降りた駅から少し歩いたそこに、目的の場所があった。 「…病院…?」 日が沈みかけたころ、不安はさらに大きく渦巻いていた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!