去り行くもの

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去り行くものを見送ることは いつも深い悲しみと 誇りにも似たかすかな希望を 僕に与えてくれる 空はどこまでも高く 故に雲はどこまでも昇っていく 風は僕の体をぐるりと巡り また空高く舞い昇っていく 高層ビルをこえていけ 連なる山々をこえていけ 象徴の下にはためくあの旗をこえていけ 騒音が心地よくなるころ 僕の瞼は閉じられている 去り行くものに声かけるならば 「さようなら」ではなく「またね」 と君なら言うのかな 僕の言葉も聞かずにね そうして瞼をひとつふたつ打つたびに 君は無言の言葉を繰り返す 僕はただ君をじっと見つめ 軽く笑いかけてどうしようもなくなる 君が見せる魂に触れてみる 行き場の無い情熱に揺れてみる 象徴の下に溢れるあの愛に触れてみる 心の鼓動を感じるころ 僕はゆっくりと瞼を閉じる one…two…three…four… 繰り返し…繰り返し… five…six…seven…eight…… 騒音の中に一定のリズムを 波のように寄せては返し 瞼の内に光と影を感じながら 無言の言葉を繰り返す one…two…three…four… 繰り返し…繰り返し… five…six…seven…eight…… ゆっくりと… 確実に… 僕は君を見送る
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