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俺は佐藤和馬。
この高校には、スポーツ推薦で入学した。
サッカーを続けたくて、ここを選んだんだけど、
一年生は先輩のサポートばかりで、基礎練習すらさせてもらえない。
毎日うんざりしていた。
部活にも徐々に行かなくなって、
熱い気持ちが一気に醒めた。
生ぬるくて、気の抜けたサイダーを飲んでしまった時のような、なんともいえない空虚。
俺の心にはぽっかりと穴が開いていた。
そんな時、彼女を見つけた。
彼女は同じクラス。
いつも遠くばかりを見つめていた。
最初は気にも留めていなかったが、
ある時見てしまったのだ。
社会を斜めに見つめるとはこのことだろう、彼女は常に無表情を守り抜いている。
しかし、ほんの一瞬だけれど、
ふっと微笑みを浮かべるときがある。
彼女の笑顔は誰にも向けられることはなかったが、
いつもの表情とはまるで違う、とても可愛い笑顔だった。
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