思い出の始まり

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8月。       僕にとって最後の夏。       病院から出てきた僕は一人で砂浜に座り、湘南の海を眺めていた。   夕方になってきて周りの人がまばらになっていく。   特に何も考えずにただ黙って海を眺める。     「あの人さっきから一人で海眺めてるよ。キモくない?」     後ろの方からそんなヒソヒソ声が聞こえてくる。   ふむ。 確かに今の僕は他の人から見たら痛い奴なのだろう。   いい加減意味が無いと思い、僕は帰ろうと立ち上がろうとした。     「…あの…すいません。」     立ち上がろうとした所で後ろから声をかけられた。   見てみると同じくらいの年だと思われる、タンクトップにサロンペットパンツという爽やかな格好をした女性だった。   長い少し茶色っぽい髪を後ろで一つにまとめ、服の上にエプロンをしている所を見るとどうやら海の家の店員さんのようだ。     「……なんです?」     「いや…あの…言いにくいんですけど……あなたさっきから一人で悲しい顔をして海を見ているから……何か悩み事かな、って思って…。」  
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