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「先生、出来れば僕、死にたくありません。」
「ほぅ…よっぽど大事なものが出来たんだね。キミの口から直接それを聞けて良かったよ。」
「はい。だから……だから僕を助けて下さい。」
僕は命乞いをした。
大嫌いな医者という職業に対して命乞いをした。
今の僕には…
意地もプライドも、何も無い。
「だから言っただろう。先生は全力を尽くす、と。」
「…………。」
「トシ君、ハッキリ言おう。仮にドナーが見つかり先生が全力で手術したとしよう。」
「…………。」
「それでも、確率は5割だ。」
2分の1か…。
正直ホッとした。
僕は勝手に良くて3割くらいだと思ってた。
3割も5割もあんまり変わらないような気もするけど…
まぁそこは気持ちの問題だ。
「5割ですか。じゃあ多分大丈夫でしょう。僕、先生を信じてますから。」
心にも無い事を言ってみた。
すると先生は例の意地悪そうな笑みを浮かべながら、
「その信頼、裏切らないでやってやるさ。」
と答えた。
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