思い出の始まり

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「ちょっと恋人にフラれたとこでしてね…」     なんとなく適当な嘘をついてしまった。     「そうですか…私で良かったら、話し聞きますよ?」     「…いや、これは僕自身の問題なんで大丈夫です。」     「…あははは。私なんかじゃ役不足ってとこですかね…。…あの私そこの海の家でバイトしてるんで、良かったらなんか食べて行って下さい!」     元気にそう言って後ろの方を指差した。   僕は彼女が指差した方を見る。         『海の家・ブラックオクトパス』     看板にはタコがサングラスをかけた絵が描かれていた。   ふむ。   僕的にはなかなか好感を持てるセンスだ。   他の人がどう思うか知らないけどね…     「私、悲美、一夏悲美って言います!」     突然自己紹介を始めた。     「一つの夏に悲しく美しいで、一夏悲美です。」     ヒトナツカナミ。     何か…     切ない名前だな…
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