思い出の始まり

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「…えーと、……」     悲美さんは何か聞きたそうに僕をちらちら見てくる。   あっ、なるほど。     「僕の名前?」     「あっ、いえ、言いたくなければ大丈夫ですから!」     「……人からはトシって呼ばれてます。」     「じゃあ私もトシさんって呼ばせてもらいますねっ!…海の家…なんか…食べて行きません?」     なんだろうこの人は?   海の家の店長に客を呼んで来いとでも言われたのだろうか?   …まぁでもそんな事は他人事だ。僕の知った所では無い。     「んー…実は僕もう帰ろうと思ってたんだ。悪いけどまた今度寄らせてもらう事にするよ。」     「そうですか…残念です…。」     悲美さんはホントに残念そうな顔をする。     「じゃあ僕はこれで。今度また湘南に来た時は是非寄らせてもらうよ。」     「はいっ!是非っ!」     そう言って僕は砂浜をあとにする。   振り返ると悲美さんはまだ手を振っていた。   うーん…   結局なんだったんだろう。
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