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臓器移植。
悲美さんが脳の病気で死んだっていうんなら…
僕に心臓を移植する事は可能だろう。
……だからなんだよ。
それは可能ってだけだろう。
そんな事信じられるか。
絵空事だよ。
僕の心臓が悲美さんの心臓だって?
「……バカけてる。そんな事……あり得ない。」
「……そりゃあな、俺だって信じたくないさ。娘の心臓が……他人の心臓になってるなんてな。」
「…………。」
何故……
何故僕を生かした……
悲美さんがいないなら、僕が生きてる意味なんて無いじゃないか。
なんだよ…
ホントに…
なんなんだよ。
「……悲美さんは何故僕の病気の事を…?」
「……?…トシ君が自分で言ったんじゃないのか?」
「いや、僕は病気の事は悲美さんには言って無いです。」
誰が…?
…………。
まさか…
僕は立ち上がり踵を返す。
「まてトシ君。」
走り出そうとした瞬間、テルさんに呼び止められる。
「悲美が最後に言った言葉だ。」
悲美さんの事だ。
なんとなくそれはわかった。
「幸せなまま死ねて良かった。……だとよ。」
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