179人が本棚に入れています
本棚に追加
僕は電車も使わず走って病院に戻ってきた。
……先生と話しをしに。
先生は…
もう帰っただろうか?
裏口の方へ走って行くと、先生がいた。
僕が病院を出た時と同じ場所で、同じ格好で、同じ表情で。
僕は息を切らしながら先生へ近付いて行く。
「あんた…一夏悲美を…悲美さんを……殺したな。」
「…ふん。どうやら真実を知ってしまったようだね。」
先生は…
低く、でも通るような声で淡々と喋る。
「殺したとは……人聞きが悪いな。あの娘は現在の医療では助けられなかった。」
「…………。」
「あの娘は自分が脳の疾患だと知った時に、すぐに臓器移植のドナーになると言ったよ。」
「あんたが…僕の事を言ったからか?」
「いや、違う。ただ、病気に苦しでる人を救いたかっただけだそうだ。」
「……じゃあ何故?」
「その後で、病院の心臓病の患者の中で…キミの名前を見つけてしまったそうだよ。」
「…………。」
「あの娘は―――
―――自分の心臓でトシ君を救えると知った時、心から嬉しそうな顔で笑っていたよ。」
……悲美さん
…悲美さん
悲美さん
僕はその場に泣き崩れた。
最初のコメントを投稿しよう!