6月某日…出逢い

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家賃代だけを送って貰っている。   食費や生活費、もっぱら、形に残らない酒と自分を偽りたい為の服代に消えるのだが…の為にバイトをしている。   最近までは週末や夜間の日払いの仕事をしていたのだが、さすがにそればかりだと身体が悲鳴をあげ始め、シフト制の仕事に切り替えようと思った。   手っ取り早いのはファーストフードの店員なんてのもあったのだが飛び出して来た街に比べて札幌の時給は安く、求人情報誌を見ていたら都合良く企業内軽作業と書かれたバイトがあり、その面接をパスして初出勤するまでに、たっぷりと時間があったもんで大通公園のベンチで昼寝なんてしていたのだ。   ぼーっとする頭を無理矢理叩き起こそうと右手をジーンズの後ろに回し、ポケットからくしゃくしゃになった煙草を取り出す。   少し歪んで歪な形をした煙草を一本取り出し、渇いた唇に持っていきくわえて火をつける。   いっきに吸い込み、口から紫色の煙を見上げた蒼空に向かって吹き出す。   しばらくすると強ばっていた脳がゆっくりと動きだす。   左手の時計に目をやり時間を確認して、ゆっくりと身を起こす。   『少し急ぐかな…』   今まで自分の部屋のようにくつろいでいた公園を後にして急ぎ足で交差点を渡り歩きだす。
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