はじまり

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ちょっと羨ましいかも… なんて思いながら麻理はふと隣を見る。 最近また気になる奴ができた。 麻理の隣で気持ち良さそうに眠る、まるでモデルのような美少年…は言い過ぎかもしれないが、少なくとも麻理にはそう見えていた。彼の名は篠崎卓(シノザキ スグル)。 話しやすく、クラスの大半の人とは仲が良い。 時々見せる人なつっこい笑顔やどこか憎めない性格の彼に、麻理は密かに想いを募らせていた。 席が近くなってから話すことが多くなり、麻理の想いは次第に大きくなっていた。 今までの人より好きかもなぁ。 …寝顔可愛いっ すると突然彼の口が開いた。 「リンゴだよそれ!!」 麻理はいきなりのことに驚いたが、再び寝息を立て始めたことに気付いてクスッと笑った。 「どんな夢見てんのよ」 「んー…面白い夢だった…かな」 寝ていたはずの卓が突然頭をあげた。 「うわぁ!起きてたのっ!?」 ないと思っていた返事に麻理は驚いた。 卓は眠たそうに目を擦りながらまた口を開いた。 「望月が話しかけたから起きた」 「まじでっ。ごめん、起こしちゃって」 「あ、別にいいよ。もうすぐ授業始まるし、逆にありがとう」 まだ眠たそうな細い目で少し笑う。 「しのって笑顔可愛いよねっ」 …!!言っちゃった!つい心の声が! 動揺しまくりの麻理をよそに、卓は少し恥ずかしそうに笑った。 「そ、そういえばさ!さっきの"リンゴだよそれ"ってなんだったの?」 無理矢理話を変えたが、卓は素直に考え込んだ。 「なんだっけかなあ…。夢見てたのは覚えてるけど、どんなだったか忘れちゃった」 「そ、そっかぁー」 卓がさっきの発言をあまり気にしていないことが分かって、安心して小さく笑みをこぼした。 「望月の笑った顔のが可愛いよ?」 「っ!!」 卓の何気無い発言に、麻理がたちまち顔を真っ赤にしたのは言うまでもない。 そんな麻理を見て卓はキョトンとしていた。
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