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『あんたが、槻城雅(ツキシロ ミヤビ)でしょ?』
男がいきなりあたしの名前を口にする。
「そうだけど…ってなんで名前知ってんのよっ!?ていうかあんた誰!?」
あたしは訳がわからずに怒鳴った。
すると男はまたもや面倒くさそうな表情を浮かべてため息をついた後、こうなったいきさつを話し出した。
『俺は叶田遊月(カノウダ ユヅキ)。あんたの親父の働いてる会社の副社長。あんたの親父、昨日の大事な会議でプレゼンミスって、クビになったんだよ』
‥‥‥。
‥‥‥。
あたしは何も言わない。
ていうか何も言えない。
まさに絶句状態。
いきなりそんな…っ
クビっ!?
ものすごい驚きと衝撃を受けてるあたしなんておかまいなしに、その叶田とか言う男は続けた。
『まあクビとは言っても、今、日本は失業率が高くて困ってるらしいから、うちみたいな大型企業は新しい制度を設けてあるんだ。…クビに値する社員は、その企業の最小子会社及び小規模海外子会社へ移動させる、ってのが新しい決まり。意味、わかったか?』
あたしはポカンと叶田を見ていた。
奴はまた溜め息をもらして説明する。
『つまり、うちの系列の1番ちっさい会社か1番重労働な会社に飛ばされるってこと』
「じゃあお父さんは…?」
あたしがやっとのことで口を開くと、
『ブラジルに行ってもらった』
ブっ…!?
はっ!?
ブラジルっ!!??
ブラジルって…
地球の裏側ぢゃん!!!!
いくらなんでも…
ブラジルって…
ブラジルって…
遠すぎるでしょっ!!!!
「なんでブラジル!?」
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