第1話:少女の人生未体験エリア

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 めんどくさい。とけだるそうに吐き捨て、いつの間にか頬に貼り付いていた髪を払った。  逆に先ほどまで無気力全開だった男の方は、 「なにぃ!?」  と一変して好奇心フルモード。目をキラキラさせながら、右手を口元に当てて饒舌に喋り出す。 「そうか。あの子の……美嶋だっけ?……とにかくその子の歓迎会を……。フフフ、良いぞ。これで明日には白黒ハッキリつけることができる。見てろよ。勝つのは俺だ。ええぃ!このボルテージ、明日まで待てそうにもない。よし!俺も一緒に様子見に……」  その言葉が、引き金。 「ふざけんなボケェ!!」 「ぶごっ!!!」  一気に距離を詰め、身長を生かした上での彼女の突き上げた蹴りが、ものの見事に男の顎を打ち抜いた。 【5】  携帯の待ち受けをのぞく。時刻は7時50分。目の前には廊下と談話室を繋ぐ大きめのドアが構えており、はめ込まれた磨ガラスには大きな字で「入る時はノックを!!」と書いてある。  どうしたものか……と、華穂は考えた。  あらかじめ言われていた場所は1階の談話室――ここで合っている。  時刻は午後の8時――10分前行動に狂いはない。  ドアの向こうからはくぐもったひそひそ声――まだ準備の途中なのか、それとも自分を待っているのだろうか。  ただ1つ、入りにくい状況であるのは確かである。小学校の頃から、華穂はこのようなパーティーだとか打ち上げとか言うイベント物が苦手だった。自分の何気ない行動や言葉で、場の空気を乱すのが怖いのである。  そのため、過去のこのような催しで、自分はほとんどと言って良いほどに目立つ行いをしなかった。  参加はする。だけどそれだけ。いないじゃ迷惑がかかるから、出席だけしてあまり深くは関わらない。そうやって、やり過ごすような形を取り続けてきたのだ。  決して人付き合いが苦手と言う訳じゃない。大阪の方では、クラスのみんなと仲が良かった。イジメや陰口も、自分の視界範囲内でされた覚えはない。  ただ、こういった集団がまとまって何かをするという行動だけは、どうしても慣れないのだ。  が、今回ばかりはそうも言ってられない。なにせこの歓迎会は自分を歓迎するイベントなのだ。自分を中心に、なのに自分の知らないところで事態が進行している。
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