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仁王立ちと正座の間に少女が2人割って入る。1人は美嶋 華穂。そしてもう1人、セミロングの髪を揺らす中背の少女。双方ともオロオロキョロキョロと視線を2人に行ったり来たりさせている。と、先程『マキちゃん』と呼ばれた金髪でウェーブのかかったロングへアの少女が溜め息をついた。
「…分かったわ。ま、今日はめでたい日なんだし。あんまり怒鳴りたくもないしね。飛鳥、今度からしっかりしてよ」
「……分かってる。ごめん」
飛鳥の謝罪をしっかりと聞いて、少女は次に華穂に向き直った。華穂の方は何か言われるのだろうかと身をこわばらせるが、その姿に少女はクスリと微笑して、
「じゃあ美嶋さん、歓迎会、楽しんで頂戴ね」
と一言、クルリと体を反転させて部屋の奥の方へ歩いていった。それと同時に、
「あ、説教終了?」
「ひゃうっ!?」
華穂の背後にまた別の少女が現れる。華穂に歓迎会の旨を伝えた、若干肌が黒めの少女本人である。
「あ~、エリちゃんどこ行ってたのぉ?」
「いやぁ、アタシあの子はちょっと苦手で……」
「あの子」とは、どうやらマキちゃんと呼ばれていた金髪の少女の事であるらしい。
「ん~、マキちゃんはいい子だよ?」
「いやいや、いい子とかそれ以前に堅すぎ。アタシの冗談なんて鵜呑みにするか怒るかの2択しかないんだから」
「む、私もちょっと苦手」
その声に3人が振り向くと、そこには立ち上がって下ジャージをパンパンと軽くはたいている飛鳥がいた。
「ごめん美嶋さん。私、いつもこーゆーところでドジ踏むんだ。ホント、こんなんだからアイツに『空気が読めない』って言われるのよ」
最後の方はまるで呟くように声をすぼめる飛鳥のポニーテールが少しなびく。
繊細できめ細やかな黒の束、彼女の膝ほどまでますソレは、おそらく今まで多くの人に「スゴイ」だとか、「綺麗」などという感想を言わせてきたのだろう。それほどまでに彼女の髪、ならびに彼女自信には、凛とした美しさがあった。
「…………?美嶋さん?」
呼ばれて華穂はハッと我に返る。完全に見とれてしまっていた。彼女の外見、そして、「見た目とはまた別の何かに」。
「あ、いえ!こちらこそ注意をするのが遅れてしまって……ごめんなさい!」
言葉と共に深々とお辞儀。その一連の動作を、飛鳥はあまり良くは思わなかった。
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