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【4】
「ふぁ~~ぅ、寝み………」
隣の男の必要もない独り言のおかげで、彼女の神経はずっと逆撫での去れ続けていた。
眠いなら寝てろ。一生起きなくていい。いや、むしろここで自分が始末しておけば、後々の世のため自らの為……
とそこまで考えて、馬鹿らしいと首を振る。
「あ?何やってんのお前。お前も眠いん?ならさっさと帰ろーぜ?」
男の執行猶予が刻々と縮んでいく。この調子で行けばものの10分で我慢の限界を悠々突破するかもしれない。
「まったく、これだから4月は嫌いなんだよ。なんで全員総出で行かなきゃならんのかと。担当1人で……ありゃ、そういやまだ担当いなかったわ。でもどうせやるならコイツと組むのだけはイヤだったなぁ」
前言撤回。男の猶予残り5分に短縮。目尻がつり上がっていくのが自分でも良く分かる。
彼女は男をフルシカトして歩をツカツカと進めた。男の方はブツブツと愚痴りながらも、しっかりと彼女の後ろにマークして歩いている。
「4、5、9に……あと3人か。なるべく5月を早く見つけねーとな。2ヶ月連続はキツいでしょ。」
イライラがピークに達しかけた。このままでは手を出しかねん。ここは悪態をついて向こうを黙らせるとするか。
「さっきからうっさいわね。だったらアンタがさっさと4なり5なり見つけてきなさいよ。私が嫌いなら、そうやってペアを新しく変えれば良いじゃない」
「あ?誰がお前が嫌いなんて言ったよ」
「言った。さっき」
「あれはお前とペア組むのがイヤだっつったんだよ。別にお前自身が嫌いってわけじゃねーよ」
「……何それ。おんなじような意味じゃない」
「……ん、そうかもしれん」
そこで肯定するな。危うくツッコミかけるが、なんとか踏みとどまり、ため息を漏らすだけに押し留めておく。
と、くだらない会話をしているうちに、2人は大きな分かれ道に出た。
右先には暗く静かなバカでかい建造物がそびえており、左先には右に比べれば劣りはするが、それでも立派に大きい建造物が、こちらはらんらんと光を発しながら建っている。
彼女は左の建物を指差し、二言。
「私向こうに用事があるから。アンタ先行ってて」
と手短に済まし、カツカツと歩き出した。
「はぁ?ちょっと待てよ。用事って何だよ。オイ!」
「呼び出されたのよ。歓迎会だって。編入して来た子の」
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