13人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
──503号室。
そこには、「真由理」が担当する患者が一人、今日も只遠くの空を眺めていた。
「今日もまた眺めていたの?」
「あぁ、先生。だって今日は雲一つないんだぜ?何だか本当に綺麗なブルーでさ、ワクワクしちゃって」
真由理が担当するこの患者は、重度の鬱でこの病院へと運ばれてきた。過去数回の自殺未遂。
此処へ運ばれてきた時もそうだった。
傷だらけの体、苦しそうな瞳。ただ彼は「死にたい、死にたい」と繰り返しながら、真由理の腕を掴んだものだった。
「じゃあ今日は一緒に屋上へ行こうか」
「え?!」
「さぁ、行こう」
患者を一人で出歩かせてはいけない。それが精神病棟の鉄則だ。真由理は微笑んで彼の手をとった。
最初のコメントを投稿しよう!