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「どうした?」
潤は岩淵の状態をありのまま伝えた。
話しながら自分が意外と落ち着いていることに気づいた。
大澤がついている。
だから大丈夫。
そんな図式が自分の中に出来上がっていたことを、まざまざと実感していた。
「20分で行く。補液を時間400で入れるんだ。それから血液型を確認して、輸血を10単位請求しろ。いいな?」
「わかりました」
「落ち着け。人はそう簡単に死んだりしない。生きる意欲があるなら尚更だ。お前ならできる。早く行け!」
潤は無言のまま力強く頷き、携帯を切ると患者の待つ病室へと戻った。
大澤から言われたことを今井に伝え、自分たちでできうる限りの手を尽くした。
薄汚れたTシャツにジャージ、素足にサンダルを履いた大澤が、手にした真っ白な白衣を羽織りながら颯爽と現れた瞬間、潤を含めたナースたちの間に安堵の溜め息が漏れた。
「遅くなってすみませんでした。心配はいりませんよ。うちのナースたちはみんな優秀ですから。吐き気はどうですか?」
診察し、テキパキと指示する大澤は見惚れるくらいいい男だと潤は思った。
どんなに汚い格好をしていても、大澤は信頼できる医者だ。
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