今日は恋曜日

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「外科の当直の先生は?」 「私もそう思って電話してみたんだけど、ちょうど外来に交通外傷の患者さんが運ばれて来ていて、向こうも人手が欲しいくらいだって。今日の当直、山田先生だから」  でも悠長に外来患者の診察を待っている余裕はない。当直だと言うのに丸岡はいったいどうしたのか。  幸い岩淵の意識ははっきりしている。でもまた吐血したら、今度こそ一分一秒を争うことになる。  当直でもない医者に頼るのはどうかと思わないわけではないが、文句も言わず来てくれそうな医者は、たった一人しか思い浮かばなかった。 「おれ、大澤先生に連絡してみます」  潤はそのまま休憩室へと走っていた。  職員の連絡先を記した名簿は各病棟にあるが、自分の携帯からかけた方が早い。  大澤の携帯番号とメアドを何度か消去してしまおうとした。  でもできなかった。  かかってくるはずなどないのに、消すのは躊躇われた。  大澤はすぐに電話にでてくれた。 「もしもし? 倉科?」  久しぶりに聞いた大澤の声に、胸がきゅんと苦しくなった。 「…先生にこんなこと頼むのは間違ってるのかもしれない。でもおれは何とかしたいんだ。力を貸してください」
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