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数十分後、院内呼び出しされていた丸岡が、あたふたしながら病棟へと現れた。
「ごめん、ごめん! ピッチの電源が切れてた!」
当直でもない大澤がいることに不思議そうな顔をしていたが、夜勤のメンバーに潤がいたことがわかると、納得したように微笑んだ。
「よかった、よかった」
「何がよかっただ!」
大澤の不満げな表情など無視し、丸岡は潤の肩をポンと叩いた。
「くらちゃん、わざわざご足労頂いた大澤先生に、コーヒーくらい淹れて差し上げて。岩淵さんのことはおれに任せて」
「そんなわけに行きませんよ。リーダーの今井さんに聞かないと」
「今井さんにはおれから言っとくから。ついでに他の人たちの分もね。それに、白衣着替えた方がいいんじゃない? 血がついてる」
見ると白衣の上着のあちこちが真っ赤になっていた。
「…じゃあ、着替えて来ます。すぐ戻りますから」
潤は大澤の顔は見ないまま、休憩室に着替えに行った。仕方ないので5人分のコーヒーも淹れた。
コーヒーを載せたトレーを手に病棟へ戻ると、そこにはもう大澤の姿はなかった。
勤務外の時間なのに来てくれたお礼も言うことができず、潤は無性に寂しかった。
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