今日は恋曜日

7/29
2453人が本棚に入れています
本棚に追加
/149ページ
 数十分後、院内呼び出しされていた丸岡が、あたふたしながら病棟へと現れた。 「ごめん、ごめん! ピッチの電源が切れてた!」  当直でもない大澤がいることに不思議そうな顔をしていたが、夜勤のメンバーに潤がいたことがわかると、納得したように微笑んだ。 「よかった、よかった」 「何がよかっただ!」  大澤の不満げな表情など無視し、丸岡は潤の肩をポンと叩いた。 「くらちゃん、わざわざご足労頂いた大澤先生に、コーヒーくらい淹れて差し上げて。岩淵さんのことはおれに任せて」 「そんなわけに行きませんよ。リーダーの今井さんに聞かないと」 「今井さんにはおれから言っとくから。ついでに他の人たちの分もね。それに、白衣着替えた方がいいんじゃない? 血がついてる」  見ると白衣の上着のあちこちが真っ赤になっていた。 「…じゃあ、着替えて来ます。すぐ戻りますから」  潤は大澤の顔は見ないまま、休憩室に着替えに行った。仕方ないので5人分のコーヒーも淹れた。  コーヒーを載せたトレーを手に病棟へ戻ると、そこにはもう大澤の姿はなかった。  勤務外の時間なのに来てくれたお礼も言うことができず、潤は無性に寂しかった。
/149ページ

最初のコメントを投稿しよう!