今日は恋曜日

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 その後岩淵は輸血と止血剤の効果が効いたのか、新たに吐血することもなく、血圧も正常値を保っていた。  翌朝には緊急の内視鏡検査が行われ、出血の原因となった潰瘍への処置が施された。  夜勤の明けた潤は大澤に久しぶりにメールした。内容は勿論夕べのことに対するお礼だったが、それだけでは何だか味気ない気がして、明日試験を受けに行くと、プライベートなことまで書いてしまった。  大澤からの返事は、昼休みと思われる時間帯に送られてきた。 『がんばれよ』  たった一言なのに嬉しくて、潤はまた送り返した。 『もう車も買ったんだ。月末には納車される』  何て返事がくるだろうかと、潤はわくわくしながら携帯を握り締めていた。  待っていた着信音が鳴り響く。期待してそれを開いた。 『そうか、よかったな。免許に車、あとは可愛い彼女で念願達成だな』  潤は何度もその文面を読み返した。何度読んでも内容が変わることはなく、いつしかその文面はぼやけていた。  今なら三崎の気持ちが痛いほどわかる。  自分から離れたくせに、もしかしたら追ってきてもらえるんじゃないかと、心のどこかで期待していた自分。
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