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「岩淵さんの具合、どうですか? おれ、あの夜勤が明けてそのまま夏休みになったから、気になってたんです」
「岩淵さんの経過は順調だよ。くらちゃんのおかげで大事には至らなかったから、本当に助かったよ」
「おれは大澤先生の指示に従っただけです。でも順調ならよかった」
「くらちゃん、あれからあいつとは話した?」
「メールでお礼は言いましたけど、直接は話してないです」
「やっぱりね…」
「やっぱりって、何がです?」
「その様子じゃ、知らないんだなってこと」
「知らない? 何を?」
何やらもったいぶった丸岡の口調に、潤は段々イライラしてきた。
「もしかして大澤先生のことですか?」
「なんだ。知ってたんだ? そうだよな、さすがにあいつだってこんな大事な話、くらちゃんにしないはずないよな。…それで、ちゃんと別れの挨拶はできたのかい? おれは夕べあいつと朝まで飲んでたけど、最後はやっぱり寂しくてさ。10年来の親友と飲めるのも、これが最後だと思うと何だか切なくてね…」
通話口の向こうから沈鬱な溜め息が漏れ聞こえた。
「…最後って、何のことですか?」
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