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街の外れ、石壁と石壁にはさまれた薄暗い裏路地――町の住人ですら、そのほとんどがその存在さえ知らない、小さな木戸。
その向こうには降り階段。階段の底から漏れる人の話し声と明かり。わずかに石段を照らすその光を頼りに、ゆっくりと降りていく。
二十段ほど地下に降りたその先にあるのは小さな酒場だ。横長い岩でできた台と、その前に五人ほどが席につけるだけの空間。
階段から通じる、その薄暗い空間に足を踏み入れる。
台の上にひとつだけ置かれた燭台にともる蝋燭(ろうそく)の明かりが、秋良(あきら)の顔を闇に浮かび上がらせた。
台の前の席に座っている、いかつい風貌の男二人が、話をやめて秋良を振り返る。
擦り切れた衣服、背中に背負った大刀。一人は片目を眼帯に包み、一人は顔や腕に無数の古傷を持っている。
この酒場を訪れる客としては小奇麗で華奢な秋良を、その二人は不審そうに眺めた。
一方、この酒場の客としては然るべき、見るからにならず者なその二人の鋭い視線を、秋良は気にもとめずに台に歩み寄った。
「……店を間違えたのではないか?」
ぼそりと聞こえた声に、秋良は立ち止まった。
すぐ前で座っている傷の男の眼光が秋良を射る。眼帯の男が、秋良を見ずに言い放った。
「お前のような子供が来るところではない」
秋良はつまらなそうに鼻を鳴らし、低い位置にある男の顔を見下ろした。
「相手の技量も量れないたぁ、その図体は見掛け倒しだな」
傷の男がぴくりと眉を動かし、眼帯の男が背中の大刀に手を掛け立ち上がった。七尺(210㎝)近くある大男は、怒りを宿らせた眼で秋良を見下ろす。
頭ひとつほども上にあるその男の眼を、秋良はまっすぐ見返した。
「揉め事なら店の外でしてくれよ」
台の奥から初老の男性の声がする。
そこにも、こちら側と同じ広さがあり、声に続いて薄明かりの中に現れたのは丸眼鏡と口髭。五十歳半ばの小太りの男性だ。
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