第弐話 運び屋

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 ここは賞金首の換金所であり、賞金稼ぎたちの情報交換の場所でもある。  彼は組合から賞金首に上げられた者を貼り出す。  その賞金首の居所や、詳しい情報などを賞金稼ぎ達から買い取り、賞金首を始末したものに組合からの賞金を払うのだ。  店主は秋良に賞金である六金を手渡す。  一枚一枚確かめるように金を数える秋良を見ながら、店主は台の奥に戻った。 「そういや、まだ運び屋続けるのかね」 「何だよ」 「最近砂漠はいい話を聞かないからな」  それは秋良も知っている。ここ数年で徐々に砂漠がその領域を広げていること。それに合わせたように妖魔の数も増えてきている。  そしてなぜか、賞金首になるようなならず者も増えているのだ。  しかし、秋良にとってそんなものは何の障害にもならない。 が、次の店主の言葉が秋良をわずかに驚かせた。 「暁城(あかつきのしろ)の連中を見かけたっていう話もあるしな」 「暁城の?」  その城は砂漠のずっと北にある。今は城内に出入りすることはできず、城内に住む者が外に出ることもないと聞いたことがある。  実際に、秋良も城は一度見たことがあるが、その中に入ったことも城の住人を見たこともない。  何でも、城内に住むのは人間ではないとか……。 「どうせ、ただのうわさだろ」 「まぁ、わしも実際見たわけではないからな。また何か運びの仕事があったらそっちに回すよ」  金四枚をしまい、階段へと立ち去る秋良の背中を見て、店主は思い出したように付け足した。 「琥珀の街に行ったら、息子によろしく言っといてくれよ」  秋良の背中はもう闇に消えており、店主の言葉に対する返事は返ってこなかった。
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