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「沙里に運び屋があると聞いての。どうしても運んでほしいものがあってこうして出向いて来た訳じゃ。ところで、運賃というのはどのくらいかかるものなのかのう?」
「えっと…」
はるかは麻の衣服に縫い付けてある小物入れから、小さな手帳を取り出して開いた。
何枚か紙をめくり、運賃を書き取っていた箇所を探す。
見つけたその頁には秋良の走り書きと、その難しい部分に付け足されたはるかのひらがなが記入されている。
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運搬料
重さ一石(1kg)につき二銀。
運搬保守料三銀。
半分は先払い。
残り半分は届け先で受取証に署名をもらってからの支払い。
はんぶんはさきにもらう
うけとりしょうになまえをもらったらのこりはんぶんをもらう
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「『重さ一石(1kg)につき二銀。運搬保守料三銀』だよ」
ようやく見つけた紙面に記入された文字を指でなぞりながら読み終わると、はるかは老人を見た。
「あれ?」
そこには老人はいなかった。
後ろを振り向くと、細い路地の両脇を固めるように並ぶ石壁の途中で、老人は立ち止まっていた。
目の前の扉を見つめていた老人は、はるかのほうを見て微笑んだようだった。
「ここが店じゃな」
「あっ」
覚え書きを開いたり読んだりしているうちに通り過ぎてしまっていたらしい。
はるかは手帳を元の場所にしまうと、老人の横に駆け寄った。
「さっ、どうぞ!」
照れ隠しもあって、意味もなく元気に木の扉を手前に開いた。
扉の表にかかっていた札が木戸にぶつかり小気味良い音を立てる。それにはこう記されていた。
『運び屋 沙流(さる)砂漠越えの荷物運搬・護衛はこちらまで』
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