第弐話 運び屋

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 勝気な性格が表れた秋良の眼が、驚くほど鋭く老人を捉えている。  はるかは慌てて老人を見た。  幸い老人は目が悪いのだろうか、もしくは目深にかぶったままの頭巾のせいで見えていないのか。秋良の様子を気にすることもなく座っている。 「あ、あきらちゃん?」  はるかが小声で呼びかけたが秋良は微動だにせず、どうしてよいものか困惑しきった表情で秋良と老人を交互に見つめた。  やがて秋良(あきら)は憮然とした表情で、老人の対角の席にどかっと腰を降ろした。  手にしていた本を置き、かわりに卓の上に置きっぱなしになっていたかごに手を伸ばす。  中から竹の皮に包まれた蒸飯(むしめし)を取り出し包みを開けた。  横からふわりと流れてきた竹と米の良い香りに、はるかもおなかが空いていることに気づく。  椅子が二つしかないため、壁際にある空の樽を秋良の近くに引っぱってきて座る。  自分の分に手を伸ばそうとした瞬間、かごがすっと指先から離れた。  さらに手を伸ばすと、またもやかごが遠のいた。  秋良がかごを自分の方に引き寄せたのだ。 「……仕事」  秋良は蒸飯をほおばった状態で、ぼそっとつぶやいた。  
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