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ごはんくらい、食べさせてくれたっていいじゃない。
と、抗議しようとしたはるかだったが、すぐに思いとどまった。
なにやら機嫌を損ねた秋良に食ってかかるのは利口ではない。こういうときは放って置くのが一番だ。
はるかはしぶしぶ覚え書きの手帳を再び取り出し、新しい頁を開く。手帳の表紙にはさんでおいた鉛筆を持ち、老人の方に向き直った。
「待たせてごめんね、おじいちゃん」
「なんの、朝食はいいのかね?」
「……うん、後で食べるから」
はるかの言葉に重ねるように、腹の虫がきゅうと鳴った。とたんにはるかの顔が真っ赤に染まる。
あっという間に包みを空にした秋良は、立ち上がり再び本を手にすると、あきれた表情ではるかの前に竹の包みを放った。
はるかは我慢しきれずに包みを開いて食べ始めた。
女の子としてはあるまじき勢いで食べるはるかを横目で見ながら、砂梨(すななし)を一つつかむ。
椅子を引きずりながら本棚の前まで来るとどさっと腰をおろし、そこで本を読み始めた。
数分後、はるかは蒸飯の包みから手帳に持ち替え、改めて老人の方に向き直る。
「お待たせしました」
「なんの、見事な食べっぷりじゃった」
言って微笑む老人に、はるかはさすがに恥ずかしくなって手帳に視線を落とした。
「えと、どこまで、何を、いつまでに運んでほしいのか教えて?」
「運んでほしい場所は琥珀(こはく)までじゃ。ここまで届けて下さらんかのぉ」
老人は簡単な地図を差し出した。道や広場などの位置から、琥珀内の地図のようだった。
「運んでほしいのは、これなんじゃ」
とん、と卓上に置かれたのは、両手の上に乗るくらいの小さな箱だった。
それを見て、はるかは困惑した表情を浮かべた。
荷物を運ぶのは重さ一石から、つまり報酬が保守料込みで五銀以上からということになっている。
しかし今目の前にある箱は、大きさにしろ重さにしろ明らかに半石もない。
はるかが説明しようとすると、秋良が ぱん、と本を閉じた。「断れ」の合図だ。
「あの……」
「届けてもらうのは早いほうが良いのじゃが、送り先の家が出かけておると困るでな。ぜひとも、夕方頃におねがいしたいのじゃが」
「でもねぇ、おじいちゃん……」
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