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カーッと耳の先まで真っ赤にしながら俺は、眼のやり場に困り宙に視線を彷徨わせる。
しかし、その美女はさらに俺の顔前に自分の顔を、ずいっと近づかせると
チュッ――。
「大丈夫……そんなに怯えなくても、何もしないわよ?」
にこっと上品な笑みを浮かべた。
言ってることと、やってることが全く違うっ!!
俺は、一瞬何が起きたのか分からず頭の中が真っ白になり、金魚のように口をパクパクと開閉させながら、美女の唇が触れた右頬を押さえた。
遊ばれているのは、一目瞭然だった。
「え、あ……お、俺……鶴八七(ツルヤヒチ)と言います」
会話が成り立たないほど、俺は完全にパニックに陥っていた。
な、な、何で……いきなりキスされたんだ?
美女は、そんな俺を見つめたままクスクスと口に手を当て笑い
「私は、水嶋幸子(ミズシマサチコ)よ。若い探偵の坊や……北の探偵様によろしくお伝えしてね。また鬼喰島で会いましょう」
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