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森の木々の間をゆっくり歩いていく。
目的地があるわけでもないのに、歩く。
蝉の鳴き声が五月蠅いぐらいに聞こえてくる。
「お姉ちゃ~ん」
後ろから、私と同じ色のワンピースとサンダルを履いた子が駆け寄ってきた。
「ぼーっとしてると置いてくよ」
妹のるいは、すぐに色んなものを見てぼーっとする癖がある。
「ごめんね、お姉ちゃん」
両手を合わせて、妹が謝った。
「……蝉、沢山鳴いてきたね。」
妹が、悲しそうな顔をして言った。
「また……あの日が来るのね……」
また……あの日が……
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