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「それにしても、何で信悟君はあの人と一緒にいるの?」
私は、取り調べなどほとんどしたことがなく、何から聞いたらいいか分からず、ふと頭に浮かんだのが、この質問だった。
「何でって聞かれましても……ほとんどが流されるがままでしたからね……。でも、一つだけ同じ所がありましたよ」
「それってなんだい?」
「真実を知りたい。それだけです……」
その答えを聞いたとき、私は言葉に詰まった。
一つの真実を知るために、まだ若い彼が危険をかえりみず、あの場所に足を運んだ。
そこまでしてでも、本当のことをしりたかったんだな…。
思えば、私は今まで何をしてきたのだろう……。
愛美の無念を晴らすため、仕事の合間をぬって事件を調べていたが、結局上からの圧力に負けてしまい、捜査を断念してしまっていた。
それどころか、新たな被害を生むのを恐れ、彼のような人達を必死に止めてしまっていた。
果たして、このままでいいのだろうか……
私の信念は、こんな簡単に折れるようなものだったのだろうか……。
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