ロストマン

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起き上がると、和哉が心配そうにこっちを見ていた。 「どれくらい寝てた?」 「15分くらい。大丈夫?うなされてた」 「ん…」 「ご飯食べて、薬飲もう」 和哉は軽く私にキスをした。大丈夫だよ…というように。 薬……効いてるのかな、アレ。眠剤は少しは効いているみたいだけど… 躁鬱は、どんどんひどくなっている。気がする。 明日は、学校行かなきゃ……勉強しなきゃ。 「それ、毎日言ってるよ」 和哉は笑っている。和哉は何も言わない、学校行けとかご飯作れとか、絶対言わない。 「でも病院は行こう」 そして、当然のように学校を休んで病院に付き添ってくれる。 病院ももう、行きたくない… 「病院、移ろうかな」 「んー?」 「全然よくならないし…」 「どこに移るの?」 「…大学病院、とか…」 地元はもっと田舎だった私は、なんとなく、大学病院ならすぐ治してくれると思い込んでいた。 「とりあえず、明日は通ってる病院行こうよ。予約してるし」 起き上がって、氷水を飲んだ。きれいな水。私の中を浄化していくような気がした。 「気分はどう?」 和哉は決して大きな男じゃない。痩せてるし、身長差は私が小さいから15センチくらいはあるけど。 でもこうして後ろから包まれるように抱き締められると、私は小さい子供になった気がして、安心するような、切ないような。 「だいぶいいよ」 にかっと笑ってみせる。薬を飲んで1時間もたつと、なんだか楽しい気分になってくる。気分が良くて、和哉を支えられるような気にすらなる。 「今日は学校どうだった?」 向き合うような形になって和哉の細い体を抱き締め返す。そのまま二人でベッドに横になりながら他愛無い話をした。 そのうち和哉がうとうとして、会話のペースが落ちて、 「だから、あの芸人はおもしろくなくてさ」 「あい~………好き」 と、よくわからない返答をして寝息をたて始めた。 疲れさせてるんだな…… 和哉の短くてちょっと硬い髪をいじりながら、また ごめんね と呟いた。 そばにいて 決して 離れないで 愛していて
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