++二人が先に行ったワケ++

2/4
前へ
/9ページ
次へ
「クロド」   「……………」   「…クーロードー」   「……黙れよテーラ。聞こえてるっつの馬鹿が」   黄色い水晶に囲まれた一室。   その中心で椅子に座って居るのは黒髪の男。 そして彼に話し掛けているのは、青い髪の少年。   クロドと呼ばれた黒髪の男は、不機嫌そうに俯せていた顔を上げた。   「うわ。ご機嫌ななめだね」   「当たり前だろ。…うさぎに邪魔されなけりゃ飛雪に印付けて…後々黒猫だって楽に…はーやだやだ」   そうぶつぶつと呟きながら、クロドは山になった吸い殻の中にタバコを押し込んだ。   テーラはそれを見てため息をつくと、吸い殻の山に潰されている灰皿を手に取った。   「さぁーすがテーラ。綺麗好きだねぇ」   「…ヴェノム。お前まで来たのかよ」   「クロドの様子だけ見に来たんだけどねぇ。…やっぱり来なきゃ良かったよ。怖いし?」   そう部屋の中央にある机に腰掛けながら、ヴェノムはグレーの瞳を細めてくすりと笑った。   銀の髪に褐色の肌。   灰皿を綺麗にしたテーラも戻り、三人がそれぞれ一つのテーブルについた。   机に座っているヴェノムに椅子の背に腰掛けたテーラ。   そしてクロドが、椅子に座ったままどかりと机に足を上げた瞬間に、三人は一斉にため息をついた。   「にしてもやられたねー。ルーキー絶対気付いてないと思ってたのに」   「…多分あいつは気付いてなかった」   「え?」   「飛雪達も囮だって自覚はなかった筈だ。…うさぎの兄貴にやられたよ」   三人はつい先程、下界で対面した自分達の敵について話していた。   一瞬うまい具合に獲物が飛び込んで来たと喜んだが、面倒な人物の登場ですんなり退散してきたのだ。   「戦っても良かったんじゃないのー?足手まといがいっぱい居たんだからさぁ」   「やだよ。あいつタチ悪いし。無駄に戦いたくねぇ」   「あー…まぁ…ねーぇ…」   「え?ルーキー?」   二人の会話に着いて行けず、疑問詞を浮かべるテーラ。   そんなテーラに顔を向けると、二人は声を揃えて言った。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加