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……えっ?
時間が止まってしまったかのように、朝陽はあたしを見つめたまま動かなくなった。
……???
あたしも、目をそらすこともできず、固まっていると、
「あたしっ!上原雅美です!」
と、雅美が香奈の手から、朝陽の手を奪い取るように掴んで握りしめた。
それにふと我に返ったように、朝陽が笑顔で答える。
「お兄ちゃんはね、ここのモデル兼営業マンなんだよ。」
真昼が説明する。
それを聞いているのかいないのか、香奈と雅美は、キャーキャー叫びながら、朝陽の手を奪い合っている。
朝陽はそれに笑顔で答えつつも、またあたしをじっと見つめてきた。
…はぅ?
あたしはどうしていいかわからずに、うつむいた。
「朝陽さーん!社長からお電話ですっ!」
すぐにバックヤードから、別のスタッフが受話器片手に手招きをした。
朝陽は、名残惜しそうな雅美たちの手を離すと、
「ゆっくり見てってくださいね。」
と爽やかな笑顔を残し、周りの女の子達の名残惜しそうな視線を受けながらバックヤードへ消えていった。
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