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夜空が気をきかせ、彼女を助手席に促した。
俺は、助手席に座る彼女を何度も見た。
うつむいている。
何か話しかけなければ…。
よく見ると、彼女が着ている服は『dolce』のものだった。
似合ってる。
そう言おうとしたけど、なぜか恥ずかしくなって、声が出なかった。
いつもの俺じゃないな…。
結局、話したのは店のことだったが、このとき初めて彼女の声を聞いた。
微かに聞こえた柔らかく優しい声。
声を聞くだけで、こんなにドキドキするなんて…。
俺は、自分が自分でなくなるような感覚に戸惑った。
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