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あたしのバイト先は居酒屋といってもファッションビルの27階にあるこ洒落た洋風居酒屋。
大きな窓から海と観覧車が見えてお気に入り。
いつかこの景色,好きな人と見たいなぁ。
15階のロッカーで制服に着替えて27階までエレベーター。
今日もいい笑顔でお勧めメニュー勧めるぞ!
調度この頃強化メニューお勧め大会をやっていてその時,あたしは40人のホールスタッフの中で8位!
顔には出さないけどかなり気合いは入ってた。
「おはようございます。」そう言って店のバックヤードでペコリ。
なんで夕方出勤なのに「おはようございます」なんだろう。
いっつも不思議だったけど未だに理由はわかっていない。
「頑張ってるじゃない?ポイント。
この調子で一位とってね。」
不意に後ろから優しく声をかけてくれたのはこの店のマネージャーの修司さん。
福山雅治似で女子の憧れの的。
目当てのお客様も多く,チェーン店の中で都心を抑えての売上上位の理由は彼にあるともっぱらの評判だった。
「・・ありがとうございます。
頑張ります。
修さんのアドバイスのお陰です。」
この人を前にするとあたしももじもじしてしまう。
ほんのり香る香水の匂い,ジャストサイズのスーツ,優雅な仕種に大人っぽさを感じてしまいあたしの頭の中がくちゃくちゃになる。
もしかしてこれが恋?
「野仲さんは可愛いから男はコロって騙されちゃうだよね。」
あたしの気持ちを知ってか知らないか,サラっと大変な爆弾を落としてくる。
「そんなことありません。でも頑張ります・・。」
目を見れないんだよなぁ。見透かされそうで。
「今日はCゾーンお願いね。20時から団体様入ってるから。」
えっ?団体様?やっと認められた?
団体予約の場合コースメニューになるのでベテランの人しか担当になれないのだ。
フリーターで夢もぼんやりしていたあの頃のあたしには何より嬉しかった。
「期待してるよ。」
軽く肩を叩かれてあたしの神経は全部そこにある様に感じた。
頬が赤いのを隠すように小走りでフロアに出た。
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