4Years ago

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「おはようございます。」 バイトがあるのでトイレで目を冷やしたけど腫れが取れてない。 スタジオを出て麻美に電話をしたけど捕まらなかった。 みんな忙しいんだ。あたしは駄目なのかな。大人になれないんだ。 「おはよう。今日もよろしくね。」 修司さんが挨拶してくれた。 いつもなら凄い嬉しいんだけど今は一番会いたくない人。 こんなあたし見せたくない。 顔を伏せたまま会釈して通り過ぎようとしたその時, 「手,どうした?怪我してるじゃないか!見せなさい!」 スタジオで悔しくて床を叩いた時に擦りむいてしまったらしい。 「平気です。」 そう言って逃げようとしたその時, 彼の大きな手があたしの手を掴んだ。 「消毒しないと後になる。それに接客業だよ。そのままじゃフロアに立たせられない。」 そう言って店の事務所にあたしを連れていってくれた。 「野仲さん具合悪いみたいだ。休ませるからフロア見てくれ。」 素早く的確に準社員の田口君に指示をして事務所に戻って来た。 「すみません・・。」 あたしは顔を伏せたまま呟いた。 「痛むかい?何があったかは聞かないけど傷を作るのは感心しないよ。」 修司さんはあたしの気持ちを察したてくれたのか顔を見ないで手当てしてくれた。 「あたし・・・子供ですか?」 突然の質問に修司さんは驚いた様子だったが一言 「夢を持って頑張れる君は大人だよ。」 そう言って頭を撫でてくれた。 「今日の入りは一時間後でいいよ。事務所でゆっくりしなさい。」 そう言ってフロアに出て行った。 こんなんされたら大好きになっちゃうよ。 トントン。 扉を優しくノックする音で目が覚めた。いつの間にか寝てしまっていたらしい。 「大丈夫?これよかったら食べて」 敦子さんが賄いのパスタを持ってきてくれた。 「ありがとう・・・ございます。」 「なにか辛い事でもあった?結ちゃんをイジメル悪い奴がいたら私が懲らしめてあげる。」 パンチする仕草で敦子さんがそう言ってくれた。 優しい言葉が痛くて,暖かくて,, 溢れ出す涙を押さえられなかった。 「よしよし。みんながいるからね。」 敦子さんは驚きもせずあたしを抱きしめてくれた。 子供に戻った様にあたしは泣き続けた。
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