迷い猫

16/25
前へ
/88ページ
次へ
「な、なにがあったのよ…?」 葵は目一杯に涙を溜めながらボソッと言った… 「…んだ…」 「えっ!?聞こえないよ…」 「ミュ~?」 しばらくの沈黙… 葵の涙が頬を滑る… 「オレの目の前で死んだ… 当時、オレの唯一の友だちだった仔猫が…トラックに引かれてな… それから猫が怖くなった… 見るだけで体が震える… オレのせいで、また死なせちまうんじゃかって… だから… ッ…美姫…」 泣き止まない葵を抱きしめる… 少しは落ち着いたかな? 「いつもは逆だよね? たまには私にも頼ってよ… 私、葵の役に立ちたいの… 大丈夫…大丈夫だから… 葵と関わって死ぬなんてあり得ない… だから、この仔猫は死なないよ? ねぇ?」 「ニャンッ!!」 「…ありがとう美姫…それに仔猫ちゃん… でも、やっぱりまだ無理だ… 猫を見ると思い出しちゃうから…」 葵は涙を拭いながら私から離れた。 「うん… でも、一歩前進でしょ!? …なんか私、この子好きになっちゃった♪ 仔猫ちゃん?私の家に来ない?」 「…ニャッ!!」 仔猫はまるで、「…イヤッ!!」と言ったかのように鳴き、プイッと顔を反らした。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2627人が本棚に入れています
本棚に追加