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ミチルが死んだ。
木々の葉が生命の光を放つ季節に、ミチルは眠るように静かに息をひきとった
嫌という程の現実を目の当たりにしたにも関わらず、私はひとつの希望を捨てられなかった
本当は眠っているだけなのかもしれない。
また瞳をあけて、私を優しく見つめてくれるのではないか。
そんな私の気持ちを裏切るかのように、ミチルが死んだ瞬間から、恐ろしい程の早さで時間が過ぎていった。
何を考える暇もなく、葬儀が済み、火葬が済み、抜け殻の様になった私の手元に、より小さくなったミチルが帰って来た。
小さな壺におとなしく眠り続けるミチルの白い骨。
何を話しかけても、返事もない。日向で夢を見続けている眠り猫のようなミチル。
どんな夢をみているのだろう
ミチルの骨とともに、誰もいない家に帰りついた私は、月明りだけが室内を照らす中、瞳をとじ、壺に耳をあててみた
何も聞こえない。壺の中はただ、無機質な静寂が支配していた
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