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骨壺の中の静寂はやがて、私までをも包み込んだ。
まるで私自身も壺の中にいるかのような、不思議な気持ちになる。
本当にそうかもしれない。
ミチルが死んだ時、私の心も死んだのだ。
今ここにあるのは、ただの死骸。
何を生み出す事もなく、これからの日々を、ただ一人虚しく過ごす、抜け殻。
ミチルの病状が決定的に悪くなった時に、既に気持ちは決まっていた。
ミチルがいない日々など、堪えられはしない。ならいっその事……
私は、ガス栓を捻った後、壺を抱いたまま、静かにベッドに横たわった。
大量に飲んだ睡眠薬がやっと効いてきたのか、頭がぼんやりとしている。
次第に薄れていく意識の中、ミチルを想った。
最期にみる夢は、せめてミチルの夢であって欲しい。
もう二度と目にする事は無いであろう室内を見渡した後、私は瞳を閉じた。
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