はじまり

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9月に入って、彼女のお葬式が開かれた。 忌中の紙が張られた家はいつもの彼女の家じゃないような気がして一瞬入るのをためらう。 参列する人もあまりいない寂しいお葬式だった。 遺体のない棺が祭壇に置かれていて、僕は映画のセットの中にいるような気持にさせられる。 リアリティのない、作り物のようで涙すら出なかった。 彼女の父も珍しく酒は飲んでおらず、隅っこで泣き崩れていた。
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