事実は小説より奇なり

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当麻撫子は相変わらず周りと絡まず一人で本を読んでいる。話しかけるの? 「…向こうから来そうにないからな」 亘は立ち上がると撫子に歩み寄った。 「当麻」 ガタガタッ すごいね亘。クラス中から注目されてるよ。 「ぐ…」 ほらほら亘怯むな!ファイト! 「わ、分かってるよ。…当麻。昨日の説明してくれるんだったよな」 「………」 何かキョトンとしてるよ。 「おい!」 「…何の話?」 「昨日の夜のあれだよ!あれ!」 「…あぁ。あれね」 なんか素で忘れてたみたいだね。 「お、お前なぁ…!」 「今ここじゃ話せない。あとで二人っきりになった時に話す」 そう言うと再び本に目線を落としてしまった。 「お、おい―――」 ガシッ 突然、亘の肩を何かが掴んだ。 「カ〇ーユ…これは一体どういうことだね…?」 「え、遠藤!?」 亘が振り返るとまるで亡者のような表情をした遠藤が立っていた。 「昨日の夜に何があったのだね、神雄?」 「二人っきりで何をしようというのだね、神雄君?」 遠藤を筆頭に亡者の集団(クラスの男子)が亘を取り囲んでいた。 「しっかり説明してくれるんだよな、カ〇ーユ?」 「だからてめぇら名字で呼ぶんじゃねぇ!!てか別に何でもねぇよ!!」 「黙らっしゃい!!一人だけ抜け駆けしおって!!」 「それだけで万死に値するというのに、よりによって当麻さんだと!?ふざけるな!!」 ヤバいよ。みんな目がイッちゃってる。すごい団結力だ。 「私がどうかした?」 撫子が顔を上げた。どうやら今の今まで自分のことだとは気付いてなかったみたいだね。 「え!?い、いや、何でもないよ当麻さん!」 「そ、そうそう!」 亡者達(クラスの男子)は慌てて笑顔を取り繕った。と、ちょうどそのタイミングで担任が入ってきた。 「お~し!お前ら席着け~!」 男子達はちっと舌打ちしながら席に戻っていった。危なかったね、亘。あのままだったら描写不可な展開になるところだったよ。 「確かに…」 冷や汗を拭う亘であった。
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