プロローグ

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ピピピピピピッ! 6月。六畳ほどの部屋に目覚まし時計のけたたましい音が鳴り響く。 ベッドの上の膨らみがモゾモゾと動き、中から手が伸びてきて目覚まし時計を止めた。 しばらくその状態で固まり、再び規則正しい寝息が聞こえてきた。二度寝したらしい。 まだ起きないようだが勝手にこの部屋の主の紹介をしてしまおう。 布団の中で寝息をたてている少年の名前は神雄亘(カミユウワタル)16歳双子座O型。とりあえずこの物語の主人公だ。 布団から一切体は出ていないが、身体的特徴としては…特に無い。 背も高い訳でもなく低い訳でもない。太ってる訳でもなければ痩せている訳でもない。 成績、運動神経共に中の下。いわゆる何処にでもいるフツーの高校生。 それが何故主人公かというと…それはまた後ほど。 てゆーかまだ寝てるよ…。 † 「ち~こ~く~だぁぁぁ!!」 と叫びながら亘は階段から駆け降りてきた。結局あれから一時間寝ていたのだ。 「まったく、目覚まし時計の意味がないじゃないか」 「いってきま~…!」 主夫である父親の呆れた声もろくに聞かずに亘はトーストを一枚ひっ掴むと語尾が聞き取れないほど速く家を飛び出していった。 † 「はぁ、はぁ、はぁ…ここまで来れば…間に合うかな…」 間に合うと判断し、亘は歩き始めた。肩を上下させながら白い息を吐く。 「…おい」 もっとも、そう大した距離を走った訳ではないが。 「だからおい!」 亘はさっきから空を見上げて何やら叫んでいる。 「分かってんだろおい!分からねぇフリしてないでさっさと反応しろ!」 …まったくうるさいなぁ。初っぱなが大切なんだよ。 「は?何の話だ?」 この何のへんてつもない少年が主人公な理由。それは神雄亘が特異な能力を持っているからだ。 「お~い…」
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