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『みんなー!元気かなー!?アゲハはものすごく元気だぞー!』
『わぁぁぁ!!』
テレビにはとあるアイドルのコンサートの様子が映し出されていた。
「あ!アゲハだ!」
「やっぱアゲハちゃん可愛ー!」
次々と通行人が足を止めていく。
「………」
気になるの?
「…ったりめーだ。幼なじみがこんなに人気者になってんだ。気にならないわけねーだろ」
テレビに出ている少女、今をときめくアイドル、彩峰アゲハは実は亘の幼なじみなのだ。
「まさかあの意地っ張り泣き虫がアイドルになるとはな。人生何が起こるか分からんな」
と、そんなことを呟くもんだから。
「あ、あの、アゲハと幼なじみなんですか?」
ほら、恐る恐る聞いてくる娘が出てきちゃった。
「え?マジマジ?」
「アゲハの幼なじみ?」
次々に来たね。
「ハハハ何言ってるんですか皆さん僕とアゲハが幼なじみなんてそんなわけ無いじゃないですかそれでは~」
超棒読み&早足でその場を逃げたね。
「ったりめーだ。面倒なことになりかねんからな」
そんなこんなで自宅に到着。
「早っ!?うちこんなに近かったっけ!?」
めんどくさいから世界情報を改ざんさせてもらったよ。
「何のことか知らんが横着すんじゃねぇ!」
便利だからいいでしょ?
「…はいはい。ただいま~」
「お帰り~」
亘が家に帰ると父親の神雄秀吉がテレビを見ていた。亘の家は共働きなので母親が働いている間は父親が主夫になるのだ。ちなみに秀吉の職業は小説家。本人曰く、なかなか売れているらしい。
「あれ?今日〆切じゃなかったっけ?終わったの?」
「そんなことより、これを見てみなさい」
「そんなこと!?」
亘を無視して秀吉はテレビを指差した。見てみるとニュースがやっていた。
『昨夜未明、神城市清明町三丁目の路地裏で、若い女性の死体が発見されました。所持品から、女性は同市内に住むOLの―――』
「三丁目?めちゃめちゃ近いじゃん」
「―――女性の死体は、まるで獣に食い散らかされたかのようになっており、警察では―――」
「げっ、悪趣味な奴がいるもんだな」
「亘も夜道には気を付けなさい」
「はいよ。んじゃ、ラノベの新刊でも読むかな~」
「亘~、たまには父さんの小説も読んでくれよ~(泣)」
こうして亘の平凡でつまらない1日は過ぎていくのであった。
「悪かったな!つまらなくて!」
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