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翌日。
「ったく、もう外真っ暗じゃねぇかよ。はぁ~…居残りで補習とかついてね~」
知ってるか亘。世間ではそれを自業自得というんだよ。
「うーるーせーえーよー、っとおろ?」
どうした?そんなどこぞの流浪人みたいな声を出して。
「書道部の部室の電気がついてら。誰か消し忘れたか?」
誰かいるかな~?🎶誰かいるかな~?🎶
「まさか。今7時だぜ?いる訳―――」
ガラッ
ドアを開けると一人の少女が畳に正座をして書をしたためていた。
「げっ…」
「人の顔見て『げっ』とは失礼ね」
人が入ってきたことに気が付いた当麻撫子が亘を見てボソッと呟く。
(そういやこいつ書道部だっけ…)
「こんな時間まで何やってんの?」
「お前こそ、こんな時間まで何やってんだ?」
「書いてる」
もっともな答えだね。
「いやそりゃ見りゃ分かるよ。何だってこんな時間まで書いてるんだよ」
「別にあなたに関係ない」
と言って撫子は和紙に向き直った。
「もう外真っ暗だぜ?途中まで送っていってやろうか?」
あれ~?もしかして亘、彼女に気があるの~?
「最近物騒だからな。おとといも気味悪い事件が起きてるし、女の夜道の一人歩きは危ねーぜ?」
あ、無視ですか…。
「別にいい」
あらら、フラれちゃったね。
「あ、そ。じゃ、気を付けて帰れよ」
「あなたこそ」
撫子は再び亘に視線を向けた。
「今日は嫌な夜。闇の住人達が蠢いてる。気を付けて」
そう言った撫子は、何故か人外のものに見えた。
†
「前々から思ってたけど、ホント変な奴だな、あいつ」
そうかい?私はそうは思わなかったけど。
「変な奴だよ。授業中何も無い所をぼーっと見てたり、あんまり喋らねーし、たまに喋ったと思ったらよく分かんねーこと言うし」
でも、確かにこんな嫌な夜は何か出るかもよ?
「嫌な夜って何処がだよ?こんなに綺麗な満月の夜なんだぜ?闇の住人も大人しくしてるって」
そんな空に手をかざしながらカッコつけないでもいいから。
「う、うるせー」
…亘、あらかじめ言っとくけど。
「何だ?」
私はどんな時でも神だから。えこひいき出来ないし、何があろうとも自分の立場を貫くから。
「は?いきなり何言って…」
クチャ…クチャ…
その時、亘のすぐ横の路地裏から何かの音が聞こえてきた。
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