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「お、おい…?」
亘は嫌な予感がし、ゆっくりと路地裏を見た。
暗がりの奥、何かが動いている。亘は目を凝らして見てみた。
それが何か。亘はすぐに認識した。いや、してしまった。
「な…あ…!?」
10mほど先に人が二人いた。
一人は女性。一人は男性。
男性が女性の上に股がり、
『食べていた。』
文字通り、腹を食い破り、一心不乱に血の滴る女性の内臓を貪っていた。
「…う、そ…だろ…?」
その亘の声が聞こえたのか、男はゆっくりとこっちを見た。何となくヤバそうだね。
「…あ…あ…」
一歩一歩後退りをする。ゆっくりと近寄ってきたみたいだから逃げた方がいいよ。
「か、簡単に言うんじゃねぇ…。あ、足がすくんで…」
残り8m。
「た、助けてくれよ!神様なんだろ!?」
残り5m。だからダメだって。何とかしたいんだったら『自分の力』で何とかしないと。
「この力が何の役に立つんだよ!?」
自分で考えなさい。残り3m。
「くそ…!動け…!動け!」
男は亘に手をかけようと手を伸ばした。
(死ぬ…!!)
ギュッと目をつぶる。その時。
「霊符『撃』」
バァン!!!
あまり抑揚の無い声と共に破裂音がして男が吹き飛んだ。
「え?」
亘が目を開けると男は5mほど離れた場所で倒れていた。
「もしかして…俺の秘められた力が―――?」
そんな訳無いって。後ろ後ろ。
「う~ん…一枚じゃ火力が足りないみたい」
「…と、と、と、当麻ぁ!?」
そこにはセミロングの黒髪を夜風になびかせながら当麻撫子が立っていた。う~ん、絵になるねぇ。
「絵になるって言っても分からんだろ、これじゃ」
「…何をぶつぶつ言ってるの?」
「あ、気にする…どわぁ!?」
おぉ!華麗な馬跳び!
「俺を踏みだ…って違う!勝手に人を台にするな!」
「許して」
ん?着地と同時に何か男に向かって投げた。
「お札?」
「一枚でダメなら、もっとたくさん」
男の体中にお札が貼り付いてる。
「霊符『撃』」
男の体のお札が光り始めて…。
バァァァァァン!!!
…た~まや~。
「言ってる場合じゃねぇ!」
煙が収まった時、男の姿は跡形も無かった。
「な…何なんだよ…一体…」
それが。
俺の平穏無事な日々が崩れ去った瞬間だった。
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