眠り羊を抱き締めて……

10/14
前へ
/166ページ
次へ
「だめなのです!ご主人様をいじめないで下さい!!」   聞き慣れた甲高い声が、聞こえるのと同じくして、黒い影が俺にのし掛かっている女に、勢い良くタックルをかます。     「――ちょっと」     そのあまりの勢いに、黒い影(=うる)と女はもつれながらベッドから転げ落ちた。     〝ぼんっつ〟     不意に、うるが変身するような音が響き渡り、部屋には見知らぬ女が、更に一人増えていた。   「‥――いったぁ~い。もお、おしり打っちゃったじゃない!」   妖艶な大人の雰囲気を宿していたはずの女は、十歳以上も若返った様子で、打ち付けた臀部を擦っている。   それでも、その色気に遜色はないと思う。   俺は顕らかに変わった女の姿を、未だ指の感触が残る首を擦りながらも観察する。   「……姉さま。大丈夫?」   その傍らには、突如現われたスレンダーな体躯の少女が、心配そうに立っていた。  
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1964人が本棚に入れています
本棚に追加