眠り羊を抱き締めて……

12/14
前へ
/166ページ
次へ
「本当に残念だわ。もう少しで極上の精気を奪えたのに!」   ムーアと呼ばれた女は、俺の方にちらちらと視線を寄越しながら、がっくりと肩を落として見せる。   「だ、だめです!ご主人様は、わたくしの恩人なのです。いくらお二人でも、危害を加えるお心積もりなら許しませんから!」   懸命に、うるは俺を庇い立てた。   緊迫した空気が流れる。   「――ふう、降参よ。もう、あんな強引なことはしないわ。……それに、うるるんの恩人じゃ仕方がないもの」   「ありがとうございます!」   手を軽く宙に浮かせ、ムーアが降参のポーズをとって見せると、緊張していたうるの面差しは破顔した。
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1964人が本棚に入れています
本棚に追加