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そして不本意な話だが、悪夢を司るムーアとムーマの双子の夢魔は、こともあろうに俺を悪夢で散々追いつめてから、精気を奪う心積もりだったようだ。
まあ実際、危うく死にかけた訳だが……。
どうやら夢魔の中でも、落ちこぼれに位置付けられている〝うる〟が司るのは、嬉しい、倖せ、とかいった良い夢の類だそうで。
抱き枕に変身して、抱いて眠ってもらわないと力が行使できないうるは、必然的に力を使い果たし……俺に拾われる結果になった訳だ。
「でも、あたしたちの妹分の、うるるんの頼みだから……ひどいことはしないとしても、お礼ぐらいしてもいいわよね?」
ムーアは、甘ったるい鼻に掛かった声で問うと、
「えっ?」
俺にしがみついてきた。
「今度は、た~っぷりと天国を味あわせてあ・げ・る❤」
「な、なに~~ぃ~っつ?!」
「だって、あたしも恭介のこと気に入っちゃったんだもの」
どうしても俺から精気を奪いたいらしいムーアは、とんでもないことを口走ると、俺の頬に口付けた。
「姉さまが、そう云うなら……」
何故か、勝手に納得するムーマを加え、俺の災難だらけの日常は幕開けた。
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