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――悪夢――
それは決まって月が綺麗な晩に、俺の夢を訪れた。
艶めかしく蠢く女の手が、俺の躰を這い廻る。
全身の毛穴が開き、躰が不快感を訴えるのに、決まって金縛りにあったようにぴくりともしないのだ。
その女の姿を確かめることも、声を上げることも叶わず。
ただ、されるがまま、おとなしくしているしかない。
最近、そんな夢をよく見ていた。
必ず最後は、あらがうことも叶わぬまま、その生っ白い指が俺の首を絞める苦しさに、目覚めると云うもの。
目覚めた後も、首にその感触が残り、消えずにあるのだ。
気味の悪さに怖気が走る。
「くすくす」と笑う、夢女の声が耳にこびりついて離れない。
女は俺を苛み翻弄するのがお気に召したようで、ひどく愉しげなご様子。
少し前から、毎夜夢の中に現われていた。
しかし、うると一緒に眠るようになり、その悪夢を見る頻度が減ったことで俺は安堵していた。
『――邪魔な子』
小さな呟きは、誰に届くこともなく掻き消えた。
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