眠り羊を抱き締めて……

9/14
前へ
/166ページ
次へ
「―――ぐうっ?!!!」   急な圧迫感に目を覚ますと、ベッド上に仰向けに寝ている俺に、女が馬乗りになっていた。   女のリアルな重みが、俺の腹に掛かっている。     そのやけに白い指先は、あの夢と同様に、俺の首に添えられている。   「あら、起きてしまったの?……仕方のない子、悪い子にはお仕置きが必要かしら」   女は紅い舌を覗かせ、愉しげにルージュの引かれた口元を歪める。   その声音は、夢と同じように弾む。   俺はその苦しさから、奇妙な唸り声を上げるのが精一杯だった。     ――俺はこの見も知らない女に、このまま黙って殺されるしかないのか?     薄れていく意識の中、俺を殺そうとする女の、顕らかな興奮を唇から還された。   ――女の唇と、濃厚なキスの感触だけが、   俺の最後の感覚を現実に繋ぎ止めていた――‥
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1964人が本棚に入れています
本棚に追加